書いちゃいました、短編小説-車道楽の悲哀-

7 小遣い制導入

ところで、車道楽というのは、たいていは買ってそのままではおさまらず、ちょこちょことモデファイするわけです。

モデファイ、平たく言うと、改造です。

BMWなどの世界戦略車は、国によって法律が違うため、高級車でも後ろ3面のガラスは、プライバシーガラスが標準装備ではなく、あくまでオプション設定の場合も多いです。

例えば、インドでは車内での女性への乱暴や凶悪犯罪が多く、車のプライバシーガラスは禁止されているなどの事情で、基本的にはオプションだそうです。

単に前オーナーさんが初期投資を節約したためか、購入時に担当さんがリアのプライバシーガラスがオプションであることを説明し忘れたためか真相はわかりませんが、私のM3のリアのガラスはプライバシーガラスではなかったため、購入後4か月でフィルムを張りました。フィルムの工賃は4万は超えていたと思います。

まあ、それくらいは車道楽以外の人から見ても許容範囲の出費だろうと思いますが、その次に欲しくなったのが、マフラーです。

友人がネットオークションをパトロール中に私の車輌に適合するアクラボビッチと言うメーカーのマフラー(定価80-100万?)を発見したと、連絡をもらいました。

E90 M3用のアクラポビッチ! 40万円!

ところで私は小遣い制ではなく、欲しいものは奥さんに申請して許可を得て購入するという方式が当時採用されていました。購入できるかは、奥さんの胸先三寸、機嫌ひとつで決まります。

ということで、奥さんにお願いしてみました。

私:「マフラー欲しいんやけど」

嫁:「もうすぐあったかくなるよ」

私:「いや、そうじゃなくて、車のマフラー」

嫁:「これ以上うるさくなったら、裏のおじさんが怒鳴り込んでくるよ」

私:「………………」

嫁:「で、何ぼするの?」

私:「40万円。定価の半額やねん」

嫁:「40万円のマフラーって、あんた天皇陛下か?高すぎるやろ」

私:「………………」

ということで、奥さんに直談判しましたが、あえなく玉砕しました。

やっぱり、小遣い制にしてもらって、月々お金をためて、許可なしにパーツを購入できたらいいな~。

月々3万円(飲み代別)を交渉し、小遣い制の契約が成立しました。

ただ、こんな問題が勃発しました。この小遣い制の契約後に子供たちを私一人でドラえもんの映画に連れて行ったときに、長女と次女はドラえもんの消しゴム(600円)を買いましたが、なぜか三女はプリキュアのタンバリン(1500円)を購入しました。

嫁:「小遣い制にしたら、小遣いの3万円に、そういうの(プリキュアのタンバリン)も含まれるで。」

私:「え~。コレは家計費からでは?」

嫁:「なんでドラえもん見に行って、プリキュア買ってくるねん。それはとーさんの小遣いからや。」

私:「じゃあ飲み代は?(めったに行かないけど)」

嫁:「私がOK出したら、家計費から出してあげる。」

私:「結局許可が要るんか…」

嫁:「何でも自由になったらつまらないやろ?」

ということで、小遣い制の導入後は、14ヶ月貯めれば、奥さんの許可なしに中古のアクラポビッチ(マフラー)が買えます。

許可が要らないなんて、夢のようです。

このような経緯で、50を前にして、小遣い制が導入されたのです。

ところが結局、その後現在に至るまで、アクラボビッチは購入には至りませんでした。

ここで、嫁語録です。

M3を所有してからというもの、今まで以上に奥さんの車に対する風当たりが強くなりました。趣味性が高い車と、現実主義の女性とは、水と油なのです。

その水と油の攻防、いや、性格には現実派の奥さんと車道楽の私の攻防の中で、数々の奥さんの名言(迷言)が生まれました。

奥さんが生んだ数々の名言(迷言)一覧です。

ホイールが欲しくて毎日eBayを物色していた頃、ふとつぶやきました。

私:「ホイール欲しいな~。サンタさん、くれへんかな?」
嫁:「サンタさんが家に入れるように、SECOM切っときや。」

結局そのホイールは、結婚10周年記念に買ってもらいました。

シフトノブをネットで物色中に

私:「なんでこんなに高いねん、たかだかシフトノブで」
嫁:「それなりの車にのっているからや。維持できひんということは、分不相応や。」

ここからは、アクラポビッチ(マフラー)購入の攻防偏です。

私:「マフラー(アクラポビッチ)欲しいな~」
嫁:「車売って買ったらいいやん」

私:「マフラー欲しいな」
嫁:「もうすぐあったかくなるよ」

(そりゃ、マフラー違い!)

私:「マフラー欲しいな」
嫁:「何ぼするん?」

私:「40万。定価の半額以下やねん」
嫁:「40万円のマフラーって、あんた天皇陛下か?高すぎるやろ」

私:「マフラー欲しいな」
嫁:「たかが空気の通り道。通行料に40万は高すぎる。」

スイフトスポーツを試乗して、見積もりをもらって

私:「総額、値引き入れずに230万。洒落で買う額じゃないな」
嫁:「時計一つ売れば?」

私:「一つじゃ買えない」

嫁:「じゃあ、全部売れば」

さらにジョンクーパーワークスの試乗の後。

私:「本体価格が398万円……」
嫁:「いいよ、買ったら?」

私:「えっ、いいの?」
嫁:「いいよ。でもこれからお金がかかる子供3人(当時10歳、9歳、5歳)抱えて、そんな高い車買ったら、そのあと複雑な罪悪感が襲ってくるで」

ヴァシュロンコンスタンタンを見に行ったときに

私:「これ(300万円)が欲しいねん」
嫁:「ポイントためて買ったらいいよ」

いったい、何のポイントをどれだけ貯めたら、300万の時計が買えるんだ?

道楽者と奥さんの攻防は続く……

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