ショートショート 車のある風景 ③アルファロメオ155

いつもの喫茶店でそれを見かけた
アルファロメオ155だった

休みの日にいつも行く喫茶店の駐車場でその車を見かけた

アルファロメオ155だった。

リアに回ってみると”155”のみでV6がなかった。

2.0ツインスパークだろうか?

学生時代、同級生が155に乗っていて
「新車なのに雨漏りするよ」
と言いながら笑っていた
典型的なアルフィスタの反応だ。

兄が156の2.0Lのマニュアルに乗っていて
ちょくちょく借り出しては、あちこちに出かけていた。

出典元:mob.org

昔のメルセデスが「猫足(ねこあし)」と表現されていたが
156のツインスパークもまさに猫足(ねこあし)だった。

156の猫足はイタリアの石畳に合わせてのセッティングだろうか?
ストロークが長くよく動くサスペンションだった。
そして、高速道路の長距離も快適で、ド素人の私でも秀逸だと感じた

155に話を戻そう。

155は当時CIVT、DTM、BTCCで活躍していて
あこがれのクルマだった。

出典元:pixabay

店内に入って、いつものセットを注文した。

店内を見渡すと、私たちと同じくらいの夫婦がいた。
服装からしてこの人がおそらくアルフィスタだろうと
勝手に決めつけた。

いつもは適度な賑わいの店内だが、その日は少し違っていた。
年配の女性がスマホで通話していたのだが
その声がいささか大きすぎた。
その少し大きすぎる声に、周囲の人が一様に顔をしかめていた。
もちろん私もその一人であった。

しかし
そのアルフィスタは違っていた。
穏やかな表情で、優雅にカフェラテを飲んでいた。
少なくとも私には、そのアルフィスタの顔は穏やかに見えた。

15分くらいだろうか?
その騒がしい女性が電話を切った
それと同じタイミングでアルフィスタの夫婦は
店を出た。

よく壊れると言われているアルファロメオと付き合って行くには
これくらいのおおらかさが必要なのだろうか?

少なくとも私は
車に対しても他人に対しても
そこまで寛容ではいられそうにはない。

この作品はフィクションです。
実在の人物や団体などとは一切関係がありません。

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ー終わりー